遂に、最終巻の一歩手前になる本巻な訳ですが。
もしも書店でこの本を手に取り、数秒の間ズボンを弄っていたり、背表紙を眺めている人を目撃したらば、僕はこう言うのでは無いでしょうか。
おっと、それはブービー賞だぜ。
いや、別にケツから一歩手前が悪いとかそういう思案は皆目ありません。

元々、この戯言シリーズの作風は変わった物です。
よく言えばクールな、ありがちな主人公の周りで起こる事件をそのありがちな主人公の独白じみた解釈で進んでいくスタイルでした。
このスタイル、やってみればよく分かる事なのですが膨大な字数が必要になるのです。
それは商業的には凄まじく効率の良い事なのでしょう。
すべてに置いて展開が遅く、それでいて物語に深みの出る素晴らしい手法と言えます。
しかしながら、強大な敵を倒すべく努力をして仲間の犠牲等により敵を倒すとまた新たな敵が出てくる。
そんな仲間の数が続く限り話がヒートアップするドラゴンボール的な展開を嫌えば、過去に何かが有った的な展開を出すしか無いのです。
この戯言シリーズもその典型に洩れる事は出来なかった様で、過去を切り売りして話は展開していく訳なのですが、驚くべきことにこの作者はとんでもない手法を打ち出したのです。
伏線を張るだけ張っておいて、それを回収せずに新たな伏線を張る。
この風呂敷を畳まずにその上に大風呂敷を敷く手法。
話に物凄い深みと、サイドストーリの充実、恐らくば常人には考えもつかないであろう展開を容易く生み出せる手法です。
僕が知っているだけでこれほどの大風呂敷を敷く作家はこの西尾維新を除いてありません、誰も使わないのです。
何故ならば、それは最終回に向けての伏線の回収に尋常では無い手間と時間が掛かるからなのです。
戯言シリーズ第5巻辺りで、話の矛盾点等及び収拾の問題でそろそろ畳み始めるのでは無いだろうか、そう僕は思っていました。
しかしながら、僕のそんな意図とはまったく正反対に話は拡大し続けるのです。
そして残るは最終巻だけとなった今、僕はこのネコソギラジカルを読んで改めて言います。
最終巻では超展開が繰り出されるでしょう。
これはもう覆すことのできない決定事項なのです、話の語り部が変わる事を除けば超展開しか残された道は無いのです。
ただ、超展開を繰り出せば・・・・・・。
すべからく物語には終わりが用意されている訳ですが、超展開とは最後に打つものなのかもしれません。
後はしーらねっ!、的な事が地で出来るからこそ最終回には超展開なのかもしれません。
だから僕は言うのです。
こいつはブービー賞だぜ、と。

長文のお付き合いありがとうございました。
別に批判に熱が入ったとかそういう事ではなく。
珍しくの長文も僕がこの作品を愛しているからこそなのです。
それでは。

ISBN:406182399X 新書 西尾 維新 講談社 2005/06/07 ¥1,134

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